骨盤骨折で廃用

晴れ
仮眠する時以外は、2日間に渡って起立不能になった母牛に付っきり、
昨日に引き続き座り直させたり、反転させたりしながら様子を見る。
さすがに眠気と疲れで自分自身もヘロヘロになり始めたお昼過ぎ、
母牛の起立不能になった原因が骨盤骨折であることが判明した。
小さい牛が大きい子牛を分娩したせいなのか、
骨盤骨折は治療不可能、廃用ということで、
明日、斃獣処理業者が引き取りにくる手筈になった。
いつかはこういう日が来ることを想像はしていたし、
他の牧場でそういう現場を見たり、
処理場を見させてもらった事もあるんだけど、
短期間でも自分が可愛がってきた牛となるとやはり話は別で、
元気なのに殺さねばならないという現実に、ただただ悲しく思う・・・。
廃用が決まり、牛を外に出しておかねばならないので、
とりあえず分娩時に子牛を引っ張っていた滑車を使い、
牛舎の出入り口付近まで引っ張ってきて、
そこからはトラクターでゆっくりと外に引っ張り出した。
牛は体重が重く、人力で出来ることは限られていて、
立ち上がれない牛を移動させるというのはとても大変な作業であり、
獣医さんがわざわざ手伝ってくれたことにただただ感謝。
有り難かった。
酪農は牛が好きだからこそやっていけるものだと思うけど、
でも一方で、本当に牛が好きなら辛い側面もあるものだと思う。
業で牛を飼う以上、牛は伴侶ではなく経済動物であり、
今回は生き長らえる事が不可能ではあったものの、
いつか、生きていけるのに処分しなければならない事もあるだろう。
そういう悲しい現実が当たり前のものとならないよう、
牛に対する愛情と感謝の気持ち、
そして牛が骨身を削って提供してくれている牛乳を大事にし、
少なくとも自分のところにいる間は、
牛に対してかけられる愛情は少しでもかけてやれたらと思う。
牛に幸せという概念は無いのかもしれないけど、
かけた愛情は色んな形で返してくれるだろうし、
それがあるからこの仕事を続けられるのかもしれない。
自分自身、勉強と経験を積み、
牛が命を落としたり、牛が苦しむ結果とならないようにしないといけないし、
それがすなわち酪農経営を安定させていける一助になるとも思う。
今回、廃用とせざるをえなかったこの母牛も、
一度も搾乳する事はなかったけれど、
ありがとうという感謝の気持ちでお別れしたいと思う。
明日運ばれていく瞬間まで、餌と水は切らさぬよう、
そして横たわってガスがたまらぬよう、見守ってやりたい。
2012年05月31日 21:56 | グレイス十勝