雪
再び分娩の予兆が現れ始めた。
乳房も張って乳が漏れ始めていた2頭の牛を、
ここ数日、3時間おきくらいにチェックしていたところ、
昨日21時半、その内の1頭が草も食べず反芻もせず、横になってジッとしている。
そろそろ来るのか?!

それから1時間後の22時半、
糞尿をするわけでもないのに尾を上げて背中を丸め始めた。
これは間違いない、分娩が近い。

さらに1時間後の23時半、破水して子牛の脚が1本出てきた。
げっ、1本しか出てこない、しかも逆さだ・・・。
これはまずいと、牛が立っていたので出てきた足を一旦戻し、
仕切り直しをさせるべく母牛の膣に手を突っ込む。
やがて2本の脚を出してくることに成功、ただ、明らかに逆子。

そして今日になり、0時半。
母牛は横になり、いよいよ滑車を使って子牛の脚を引っ張り始める。
しかし出てこない。
引っ張る角度を変えてもまったく子牛は出てこず、
さらに力をこめて引っ張っても、
母牛が引っ張られて溝に落ちそうになる。
ここで前回のお産介助の情景がよぎる。
これだけ時間をかけて引っ張ったら、
また子牛が死んでしまうのではと・・・。
急いで獣医を呼ぶべく電話をかけた直後、
引っ張る角度を逆に尻尾側へと変えてみたところ、
ようやく子牛がズルッと出てきた!
何とかなったと、急いで獣医に来なくても大丈夫と連絡を入れる。

1:15。
子牛は幸いまだ息があり、羊水を吐き出させ、一命をとりとめる。
タオルで拭いてやり、母牛を搾乳して子牛に初乳を与えると、
意外と元気に勢い良く飲んでくれた。
ホッと一安心、ついに牧場初の子牛が誕生した瞬間だった。

6:30、母牛から後産が落ちる。
後産は普通、分娩後数日以内に落ちるもので、
もし落ちなければ獣医を呼ばねばならない。

生まれてきた子牛は元気だとちょっと安心していたものの、
もう何時間も経っているのに立てない。
強制的に立たせてみると、後脚が良くないみたいで、
うまく踏ん張れていなかった。
分娩の際、あまりに強く引っ張り続けていた影響もあるんだろうか。
とりあえず日中は何度か歩行訓練を行う。
大動物は、歩けないと即、死に繋がってしまう。
ただ、立たせてやると、ヨロヨロとはしながら何とか歩けるようで、
何度か訓練しているうちにちゃんとなるかもしれない。
16時、気になっていたもう1頭が尾を上げて背を丸める行動を取り始める。
こっちも来るか?!

17時半、ついにこの牛もお産が始まる。
子牛の脚は正常に出てきているようで、
手を突っ込んでみると、子牛の鼻を触ることが出来た。
3回目のお産にしてついに正常分娩か。

母牛がいきむのに合わせて、子牛の脚を滑車で引っ張り始めると、
あっけなくズルッと子牛が出てきた。
正常分娩だとこんなにスムーズなんだなぁ。
子牛はとても元気で、初乳もゴクゴク飲む。

子牛が2頭になり、搾乳牛も3頭になった。
さすがに3頭分の牛乳となると、
いくら子牛に与えたところで牛乳の量が多すぎ、
全てを消費しきれるかは難しいかもしれない。
でもまあ、極力廃棄することなく、利用できればと思っている。
ちなみに、母牛は全て初任牛で、
お産を軽くするため和牛を交配してあり、
生まれてくる子牛はF1(雑種第一代)で、売却するしかない。
2産目からはホルスタインを交配し、後継牛を育てていければ良いな。