雨の中、夜中に車を走らせ、瀬棚に。
以前旅をした奥尻島、とあるきっかけから再訪する事になったのだ。
前回奥尻島を訪問した事がきっかけとなり、移住候補地として急浮上、
奥尻町役場の担当者が熱心に動いて下さり、仕事や家の目処をつけてくれたのもあって、
再訪し、お話を伺ってみようという事になったのだ。
そう、以前から私は牧場の規模を拡大したいと思っていて動いていたものの、
農地法などの障害により、一般人である私は馬を飼う目的であっても農地の所得が認められず、
中標津の農業委員会に相談に行った事もあるが、まともに相手にしてくれなかったのもあり、
中標津では現実的に今の牧場を拡大できる見込みが薄く、町外も含めて探すしかない状況だった。
とある縁でカナダへの移住への道も出来たが、移民ビザがどう転ぶか分からない上、
今の仕事はやりがいを失い、色んな不満もあって、今年度で辞める事にしているため、
来年4月以降は自分がどうしているのかまったくもって不透明な状況だったのだ。
そんな中、快く迅速丁寧に動いて下さった役場の方がいたからこその再訪となり、
色々な場所への案内や、仕事について会社の社長との面談のセッティングをして下さったのだ。
さて、サンちゃんを失った失意の中、瀬棚からフェリーは出港し、奥尻島へ。
天気は心の状態を表しているかのような雨。
観光シーズンを過ぎた平日のフェリーの中は閑散としていて、ほとんど貸し切り状態だった。
フェリーに揺られること1時間半、午前11時に奥尻港へ入港。
その頃にはちょうど雨があがり、晴天とまではいかないまでも、そこそこの天気となった。
役場のNさんとフェリーターミナルの観光案内所前で待ち合わせをしており、無事にお会い出来た。
Nさんの車に乗せて頂き、奥尻市街を抜けて南へと車は走り、青苗市街へ。
空きのある公営住宅を、部屋の中まで見せていただいたが、かなり広い。
3LDKの部屋で、一般的な所得がある人なら家賃2万円くらいだそうな。
その後、奥尻空港や、1戸だけあった酪農家が去年離農した跡や、水田地帯を案内され、
なんと昼食に食堂「潮騒」へ!
潮騒は前回の旅でも訪れた、ボリューム満点の料理が出てくる食堂だ。
イカ定食をご馳走になり、お腹は満腹。
13:00から社長との面談があり、事務所へ。
その社長は建設業、観光業、農業など手広くやっていて、
すごくエネルギッシュで視野が広く、カリスマ的な社長だった。
ちょうど数年前から葡萄の栽培に取り組んでいて、来年にはワイン工場を建設、稼動させるとか。
個人的にブドウ栽培やワイン醸造は興味があったので、その旨は伝えてあったのだが、
とりあえず葡萄畑で働けるよう幹部会議に諮ってくれるそうで、
頑張るという事なら移住は大歓迎、支援も惜しまないとまで言って下さった。
馬を飼うためにかなりの広さの牧場も必要だと言うと、
休耕地もたくさんあるし、愛馬達の受け入れにも考慮して下さっている感じだった。
さらに、乾草は町の牧場で作ってるから心配ないとの事、心強い。
一通りお話をした後、葡萄畑へ連れて行って下さった。

社長がおっしゃるには、北海道では育たないと言われていたメルローが奥尻では育った事、
他、台風や塩害によって枯れなかったツバイなどを育てているそうで、
色んな品種をとりあえず植えて、生き残った品種を増やしていくとの事だった。
奥尻島は冬でも氷点下10℃を下回らない温暖な島で、葡萄も冬の枝降ろしをしなくて良いのだそう。
冬に枝降ろしをしなければならない地域というのは本来葡萄栽培に向いていないわけで、
そういう意味で奥尻島は葡萄の栽培に適しているという事だろう。
奥尻島ならではのやり方として、地面から腰くらいの高さまで網を張り、
タヌキ対策、キジ対策を取っていた。
タヌキは1列綺麗に食べるのだそうで、他の列に誘惑されないけど、
キジは転々とあちこちに移動して食べるようだ。

成っている葡萄を何房か頂いたけれど、
生食用の品種だけじゃなく、ワイン用の品種ですら甘く、適度な酸味があって美味しかった。
何箇所か葡萄畑を見させて頂いた後、同じく経営しているミネラルウォーターの工場へ。

「奥尻の水」として今年から販売を開始している神威山の伏流水は美味しい。
社長から「今日はどこに泊まるんだ?」と訊かれ、「野営です」と答えると驚かれ、
なんと経営しているホテルに泊まっていけと電話してくれるではないか!
恐縮至極だけれど、お言葉に甘え、緑館という温泉ホテルに宿泊させてもらう事となった。
夕食も豪華で、至れり尽くせりである。
ここまでしてもらって良いのだろうかと思ったし、社長の人柄には本当に敬服した。
ああいう人ならどんなに厳しくてもたくさんの人がついていくだろう、そう思わせる人だった。
Nさんにしても、社長にしても、忙しい中、時間を割いて下さるばかりか、
色々とお世話してくださって本当に感謝の思いでいっぱいだった。
お二方と別れた後、ホテルの部屋でしばし休憩。
サンちゃんのどたばた、そして徹夜の車の運転、風邪をひいているのもあって、ぐったり。
それでも散歩にと神威脇漁港まで行ってみた。
相方が釣りをしてみたいというので、持ってきていた川釣り用の仕掛けで釣り糸をたらしてみる。
すると小さな小さなフグがたくさん釣れる。
いじってみるとキュッキュッと音をたてて膨らんでいく様が面白い。
神威脇温泉にも入ってみたが、なかなか良い雰囲気だった。
味わいのある窓口を抜け、2階の展望風呂からの景色は絶景。
神威脇では商店でチューハイを買い、飲みながら歩いて戻ると、結構酔っ払った。
緑館の夕食に舌鼓をうち、温泉に入り、ぐっすり就寝~・・・。